ゆらゆら病の記憶2008/06/30 10:58


 朝、ある人と話していてメニエル病の話になった。人によって個人差はあるだろうが、四六時中、船酔いのような状態になるつらい病気だ。
 2年前だったか、僕はメニエル病の一歩手前、前庭神経炎という病になった。小学校のグラウンドで少年野球の練習をしていて、コーチが手をたたくとストップして逆方向に走る、また手をたたくとクルッと180度向きを変えてダッシュする、これを繰り返すトレーニングをしていた際、「こうやってやんねんて、見ときや」と子どもたちに見本を示そうとしたら、滑って転んだか、ふらふらしたのか忘れてしまったが、とにかく足下がゆらゆらした。
 中学・高校時代にバスケットボール部で何度も何度もやったトレーニング方法だったので、体力は当時よりも衰えているとはいえ、できなかったことに自分自身、ショックを受けた。
 他のコーチであるIさんやHさんに無理しないほうがいいですよと言われ、校舎の前に階段のところで休憩し、その日は無理をせず、帰ったのではなかったか。子どもたちが内野ゴロのノックを受ける間、ファーストで送球を受けたかもしれないが、とにかく、ふらふらして以降は、激しき動きはせず、練習が終了したら帰宅。その日は家でおとなしくしていた。
 そして翌日、妻に言われ、耳鼻咽喉科で診察を受けたところ、前庭神経炎と診断された。聴力検査で異常はなかったのだが、片足で立てますかといわれ、やってみたら(たしか、目を開けて片足立ちしたのに)全然立てないどころか、吐きそうになり、つらかった。
 で、全治2カ月か3カ月と言われた。3週間くらい、ゆっくりしていたら、ずいぶん良くなりますよ、と先生はおっしゃったが、それができれば(それくらいゆっくりできれば)どんないいか、と思ったことか。
 できるだけ無理をしない、激しい動きは治るまで絶対しない、疲労をためない、睡眠時間を十分にとるなど極力気をつけ、家族の協力もあって、僕はなんとか完治したが、今でも睡眠不足が続かないようにとか、あまりくよくよ悩まないように注意している。肉体的な疲労、精神的な疲れ、どちらも前庭神経炎の大敵だからだ。
 知り合いはメニエル病だというから、その一歩手前の状態だった当時の僕より、たぶんつらいのだろう。首を早く動かしたり、体の向きを急激に変えると、ふらふらしたり、倒れそうになるということだった。だから、日常生活の中でも急いで何かをするのは危険。また、メニエル病の場合、ある周波数の音(高い音だったか低い音だったか忘れてしまった)が極端に聴きとりにくくなるそうだ。
 今朝、その知人とメニエル病の話をしていて、耳鼻科の先生に言われてことを思い出した。たとえば、信号を見るときなど、絶対に首をふ素早く動かさないこと。これ、その当時、無意識にやってしまったことがあるのだけれど、世界がぐらんぐらんと揺れ、地球がぐるっと一回転(もちろん自転でなく、一瞬にして一回転)するかと思えたほどだった。あるいは、地球がまるごど揺れているような。
 前庭神経炎よりもつらいであろうメニエル病から、その知り合いが早く良くなってもらいたい。


text and illustration:Yasuhiro Ohkura