ヴェンダースと下北沢2009/01/23 11:41


 下北沢北口の書店に、下北沢を守ろうという運動のポスターが貼られている。再開発などによる急激な変化から、路地の町・下北沢を守ろうといった活動している団体によるポスターなのだが(僕の表現では正確ではないかもしれない)、そのポスターに印刷されている何名ものメッセージに混じって、こういった文章があった。

 ヴィム・ヴェンダース(映画監督)

 “下北沢”という街を知ってから、東京という都市の生命力の
 核心に初めて触れたように感じます。私は下北沢が今の姿の
 ままで残ることを心から強く願います。


 小津安二郎監督を敬愛し、日本に好意を持っている映画監督ということくらいは僕でも理解しているし、就職活動の合間だったか、日比谷シャンテで観た『ベルリン・天使の涙』は今も忘れられない傑作だと思う。しかし、下北沢とヴェンダースのつながりについては知らなかった。 「東京という都市の生命力の核心」であるかまではわからないが、路地と混沌のこの街の魅力は、区画整理し、駅前にバスターミナルをつくり、北口と南口を分断し、見た目にすっきりした場所に変えてしまえば、かなり失われてしまうだろう。路地、それから雑多な人、さまざまな小さな店、そしてなにより、車よりも歩行者を優先する下北沢が姿を変えないでほしい、と私も思う。
 タクシー乗り場があれば便利だという声はもちろんわからないでもないが、車の通行を優先してしまうと、どこの駅前とも似た、金太郎飴のような街になってしまうであろう。



text and illustration:Yasuhiro Ohkura